#003 【水槽】 [世界の終りに贈る歌]

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 僕の才能を伸ばす助力は惜しまない、信者のような人たちまでいると言って、信じる人はいるんだろうか。

 『10歳で神童15歳で天才』という言葉があるけど、僕の場合は4歳で神童13歳で天才らしい。


 じゃあ、ハタチ過ぎる前にただの人になるかもね。



 僕や僕の家族は、僕の信者である彼らのことを『教授』や『助手さん』と呼んでいた。

 もう10年もの付き合いだ。

 もっとも、『助手さん』たちの多くは、短い期間で入れ替わりしてしまうけど。



 物心ついた、というのは一体どの段階でいうのだろう。


 僕の一番古い記憶は、大きな四角に区切られた天井。僕はただそれを見上げている。

 僕は横たわっているらしく、左足の方向にやはり四角い照明が付いている。

 白いプラスチックでできたような照明のカバー。天井は薄汚れて、白というよりは灰色に近かった。


 幼稚園に通っていたある時に両親にその話をしたが、その時はこう言われた。

「夢でも見たんじゃない?パパもママも、そんな場所は知らないわ」

 僕はムキになり、絵に描いてまで更に説明した。絵を描いている途中で思い出したベッドの柵のようなものも足して。

 それでも両親はまともに取り合わなかった。

 当時、彼らは他のことで忙しかったのだ。

 それは母が僕の妹を・・・待ち望んでいた女の子を妊娠していたから。


 僕の記憶が正しかったかどうかは、ほどなくして判明した。

 妹が無事に生まれて、祖父母と父と共に初めてお見舞いに行った時のことだった。

 『新生児室』と書かれた部屋・・・4歳だったが、僕はかなりの数の漢字を読めた・・・に、妹を迎えに行くと言うのでついて行ったのだ。



「つ~ちゃんもこの病院で生まれたのよ。そしてこの赤ちゃんたちと同じように、このお部屋でねんねしてたのよ」

 母は溶けそうな笑顔でそう説明しながら、廊下の大きな窓から覗かせてくれた。


「あれ?ボクここ知ってるよ」

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