#005 【坩堝】 [世界の終りに贈る歌]

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 父と大人たちは僕の言葉を聞いて笑った。

「大丈夫だよ・・・司、お前は賢いいい子だ。入院なんてしない」


「私たちはね、あなたとお勉強やお話をしてみたいだけなの。いいかしら?」



 その日から、僕と『教授』たちは頻繁に会うようになった。

 『お勉強』『ゲーム』『お話』の時間に分れていて、メンバーもその都度多少入れ替わった。

 色んな本やビデオ、ゲームに囲まれて、僕は少しも苦痛を感じなかった。むしろ楽しくてしょうがない。毎日だっていいとさえ思っていた。

 両親は妹を猫かわいがりしたが、僕にも充分愛情を注いでくれていたと思う。

 ただ、僕には時々それが鬱陶しかった。僕をまるで小さい子供のように扱うから。

 ラジコンだのアニメだの、あんなのは子供の遊びだ。



 9歳の誕生日。祖父がコンピューターをプレゼントしてくれた。

 初めてのインターネット。父も仕事で少し使う程度で、うちには詳しい人は誰もいなかった。

「そんなに利発なお子さんでしたら、是非パソコンをお奨めします、って言われたんだよ」

 家電販売店の店員の口車に乗せられた雰囲気もあったが、祖父は得意げだった。

 僕は早速『教授』たちに色々と教わり、1週間もしないうちにそこそこ使いこなせるようになってしまった。

 インターネットのお陰で、僕は両親や『教授』たちが教えてくれないような情報も色々と知った。

 世の中のいいこと悪いこと。愚かな争いや、刺激的な遊び・・・僕にとってはすべてが興味の対象だった。

 『教授』たちの所から帰って来て学校の宿題を終わらせてしまうと、僕は自室のパソコンで時間を潰すことが多くなった。



 もしも僕のやっていることがばれたら、すぐさまパソコンを没収されただろう。

 でも慎重に行動していたので、気付かれることはなかった。


 僕は密かに知識を蓄え続け、実行する機会をうかがっていた。

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