#054 【ノイズ】 [世界の終りに贈る歌 II]
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「普通の車なら平気だったんだよ。でもバスに乗ったのは、その時が初めてだったから」
僕の言葉で、先生と母がふふっと笑い合った。
この人がうちに来るようになってから、僕のペースは崩されっぱなしだ・・・
僕はため息をつきながらコーヒーを飲み干した。
今日もまともに会話できなかったな・・・
ほの香先生の帰る時間が近くなり、壁掛けの時計を見上げながらため息をつく。
近くにいるのに、何故か以前より遠くなってしまった気がする。
「今度は、水曜日にしましょうか」
荷物をまとめながら先生が言う。
「ん~・・・どうしようかなぁ」
僕は机に肘をついて、ちらりと先生を見上げる。
「今の状態じゃ、1人で勉強してるのとあまり変わらないんですよね・・・むしろノイズが多い」
・・・少し感情が出てしまった。
なるべく淡々とした口調で言おうと思ったのに、言葉には少し棘が混ざっているような気がする。
「ノイズねぇ・・・」
先生はそう言うと黙ってしまう。
呆れられただろうか・・・それとも怒らせたんだろうか。
静かに僕を見つめる先生の視線を受け止めているのが、段々つらくなって来た。
「それじゃあ・・・来るの、やめようか?」
ふざけている様子もなく、脅しでもなく・・・先生の考えと言葉の真意が、僕にはわからない。
「ど・・・どういう・・・」
自分でも恥ずかしいくらい、僕の声は掠れていた。
「言葉の通りだけど・・・?あたしがここに来るのをやめましょうか?って」
マフラーを首に掛けながら先生が言う。
それって・・・家庭教師をやめるってこと?
それとも、付き合いを?
一言訊けばはっきりするのに、僕にはその一言がどうしても言えなかった。
ほの香先生はコートを羽織る。僕の様子には気付いていないようだ。
そして、着替えが入っているためにいつもより少し大きなバッグを手にして振り向いた。
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「普通の車なら平気だったんだよ。でもバスに乗ったのは、その時が初めてだったから」
僕の言葉で、先生と母がふふっと笑い合った。
この人がうちに来るようになってから、僕のペースは崩されっぱなしだ・・・
僕はため息をつきながらコーヒーを飲み干した。
今日もまともに会話できなかったな・・・
ほの香先生の帰る時間が近くなり、壁掛けの時計を見上げながらため息をつく。
近くにいるのに、何故か以前より遠くなってしまった気がする。
「今度は、水曜日にしましょうか」
荷物をまとめながら先生が言う。
「ん~・・・どうしようかなぁ」
僕は机に肘をついて、ちらりと先生を見上げる。
「今の状態じゃ、1人で勉強してるのとあまり変わらないんですよね・・・むしろノイズが多い」
・・・少し感情が出てしまった。
なるべく淡々とした口調で言おうと思ったのに、言葉には少し棘が混ざっているような気がする。
「ノイズねぇ・・・」
先生はそう言うと黙ってしまう。
呆れられただろうか・・・それとも怒らせたんだろうか。
静かに僕を見つめる先生の視線を受け止めているのが、段々つらくなって来た。
「それじゃあ・・・来るの、やめようか?」
ふざけている様子もなく、脅しでもなく・・・先生の考えと言葉の真意が、僕にはわからない。
「ど・・・どういう・・・」
自分でも恥ずかしいくらい、僕の声は掠れていた。
「言葉の通りだけど・・・?あたしがここに来るのをやめましょうか?って」
マフラーを首に掛けながら先生が言う。
それって・・・家庭教師をやめるってこと?
それとも、付き合いを?
一言訊けばはっきりするのに、僕にはその一言がどうしても言えなかった。
ほの香先生はコートを羽織る。僕の様子には気付いていないようだ。
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#053 【荊】 [世界の終りに贈る歌 II]
最初から読む | この章の最初
これじゃまるで、お付き合いごっこじゃないか。
ほの香先生に、相変わらず子供扱いされているのも結構癪に障る。
早くチャンスを作らねば、どうにかなってしまいそうだ。
母は当たり前のように3人分のパイを用意した。
階段でふらついたら困るので、僕がコーヒーのポットとカップ一式を持つ。
僕の部屋のミニテーブルは、3人で囲むと正直狭い。
それでも、先生と母は仲良く膝を並べている。
こうなると最低でも1時間は掛かるので、諦めるしかない。
僕は黙々とプリンパイを口に運びながら、昨日買ったばかりの本を開いていた。
「・・・いつにしましょうか。ねえ?つ~ちゃん」
コーヒーを飲み干した時に、急に母に話を振られた。
「なんの話?」
ポットにかぶせてあるコゼーを取りながら、興味なさそうな声で返す。
『ティーコゼー』という名称はあるのに、何故『コーヒーコゼー』とは言わないんだろう・・・
そんなどうでもいいことをぼんやり考えながらちらりと先生を見る。
少し前までの母は声色で察してくれていたのに、最近はお構いなしだ。
「聞いてなかったの?先生とね、一緒に水族館に行こうと思うのよ。進もそろそろ遠出できるだろうし」
先生はにっこりとしながら僕に言う。
「司くん、イルカのショーを観たいって言ってたわよね?」
そういえば話の流れで言ったかも知れない・・・でも、そんな乗り気ってわけでもないんだけど。
「幼稚園の親子遠足で水族館に行った時は、バス酔いが酷くてそれどころじゃなかったのよねぇ」
母の言葉に、ほの香先生がふわりと笑う。
まったく、余計なことを・・・僕の数少ない汚点だというのに。
「普通の車なら平気だったんだよ。でもバスに乗ったのは、その時が初めてだったから」
僕の言葉で、先生と母がふふっと笑い合った。
この人がうちに来るようになってから、僕のペースは崩されっぱなしだ・・・
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これじゃまるで、お付き合いごっこじゃないか。
ほの香先生に、相変わらず子供扱いされているのも結構癪に障る。
早くチャンスを作らねば、どうにかなってしまいそうだ。
母は当たり前のように3人分のパイを用意した。
階段でふらついたら困るので、僕がコーヒーのポットとカップ一式を持つ。
僕の部屋のミニテーブルは、3人で囲むと正直狭い。
それでも、先生と母は仲良く膝を並べている。
こうなると最低でも1時間は掛かるので、諦めるしかない。
僕は黙々とプリンパイを口に運びながら、昨日買ったばかりの本を開いていた。
「・・・いつにしましょうか。ねえ?つ~ちゃん」
コーヒーを飲み干した時に、急に母に話を振られた。
「なんの話?」
ポットにかぶせてあるコゼーを取りながら、興味なさそうな声で返す。
『ティーコゼー』という名称はあるのに、何故『コーヒーコゼー』とは言わないんだろう・・・
そんなどうでもいいことをぼんやり考えながらちらりと先生を見る。
少し前までの母は声色で察してくれていたのに、最近はお構いなしだ。
「聞いてなかったの?先生とね、一緒に水族館に行こうと思うのよ。進もそろそろ遠出できるだろうし」
先生はにっこりとしながら僕に言う。
「司くん、イルカのショーを観たいって言ってたわよね?」
そういえば話の流れで言ったかも知れない・・・でも、そんな乗り気ってわけでもないんだけど。
「幼稚園の親子遠足で水族館に行った時は、バス酔いが酷くてそれどころじゃなかったのよねぇ」
母の言葉に、ほの香先生がふわりと笑う。
まったく、余計なことを・・・僕の数少ない汚点だというのに。
「普通の車なら平気だったんだよ。でもバスに乗ったのは、その時が初めてだったから」
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