#007 【ルーチン】 [世界の終りに贈る歌]

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 母の心配はもっともだ。でもそのせいで痣が増えたり、くだらない大人の相手をするのは遠慮したい。

「じゃあね、僕、せめて女の先生がいいなぁ・・・」


 不承不承という顔で、僕は提案する。



「男の先生は、なんかみんなプライドが高いばっかりなんだ。その点、女の人なら優しそうだから・・・駄目かな?」

 もちろん、両親が駄目というわけがない。そう確信したうえでの『おねだり』だった。



 初めて会った女性の家庭教師は、ヨシミと名乗った。専攻は物理だという。

 少し緊張しながら自己紹介をする様子を、さり気なく観察する。そして、2人きりになった時、こう切り出した。

「ヨシミ先生ってさぁ・・・実は結構夜遊びするタイプじゃない?煙草も吸わないって言ってたね。でもさ、あれ嘘でしょ」

 相手の顔が一瞬でひきつる。それを確認してから、僕は笑顔で付け足す。

「母はそういう女性が嫌いなんだよね。でも僕は違うよ。お願いを聞いてくれるなら、黙っててもいいんだけど・・・」


 交渉成立は思っていたよりもたやすかった。


 * * * * * * * * * *


「今日は先生の家で勉強させてもらうんだ」

 家庭教師の日、僕はそう言って仕度をする。

「あら・・・そんな話、前回は聞いていなかったんだけど。いつ言われたの?」

 少し困惑して首を傾げる母に、僕は澄ました顔で答える。

「僕が先生にお願いしたんだよ。たまには環境を変えてみるのも、いい刺激になるんじゃないかと思って」

 それを聞いて、相手が誘ったわけではないならと、母も安心したようだ。

「僕、よその家にお邪魔する機会もあまりないし、楽しみにしてたんだ」



 母親は、自分の子をいつまでも子供扱いする傾向にあると言われるが、うちもそうらしい。

「先生にご迷惑をお掛けしないようにね」


 母はそう言って、お茶菓子を僕に持たせた。

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