#013 【バーン】 [世界の終りに贈る歌]

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「本当は全身に歯形をつけて欲しいんだけど・・・まだ無理?」

 まだ、というより、多分一生無理だと思う。全身なんて、僕の顎がもたないよ。


 今日は勢いに任せて、首から胸まで頑張ったんだけどな。僕の趣味とは違い過ぎて・・・ごめんね、麻衣子先生。



 3学期。

 雪上運動会だの、スキー授業だので浮かれている同級生とは裏腹に、僕は沈んだ気持ちでいた。

 元々寒いのは好きじゃないが、原因はそれだけじゃない。

 今僕には家庭教師がいない。

 つまり、定期的に気分転換させてくれる相手がいないということ。

 高校生なら割と簡単に捕まえられるだろうけど、僕がもう相手にしたくなかった。


 なつめ先生が変な気を起こさなければ、2年に上がるくらいまで延ばせたんだけどなぁ・・・僕はため息をつく。

「あたしが就職したら、食べさせてあげられるようになるから・・・18になったらすぐ結婚してよ」

 そう言ったのは女の先生では5人目のなつめ先生。薬学部の講師の誘いを断ってでも僕に会いに来ようとした愚かな人。

 なつめ先生を辞めさせる時は、ちょっと根回しが大変だったな・・・


「いよう!何ため息ついてんだよぉ」

 突然勢いよく背中を叩かれる。振り返るとイサムが笑っている。プリクラの件以降、イサムと僕は話す機会が増えた。

「・・・今何か貼ったろ」

 僕は背中に手を回す。ほら、やっぱりだ・・・イサムは小学生みたいないたずらが好きで、よく仕掛けて来るから。

「なにこれ・・・色男?僕、そんなタイプじゃないよ」

 苦笑しながら紙を丸めて捨てる。イサムはすごくがっかりした顔で僕を見た。

「なんでバレんのかなぁ~・・・今日は大丈夫だと思ったのに」

 なんでって・・・なんでばれないと思うんだろう?



「あ~あ。さすが色男だよな~」

 悔しそうな口調のイサム。僕はその言葉を聞きとがめる。


「だからなんだよ・・・厭味?僕のどこをどう見ればそうなるのさ」

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