#015 【縁起】 [世界の終りに贈る歌]

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「やっぱお前みたいなのが、いい人に見えるもんなのかなぁ」

「そうかなぁ・・・」


 イサムの言葉で当時を思い出し、逆にぼくはおかしくなった。結構彼女には酷いことしてたんだけど。



 それに付き合ってたのはせいぜい2週間程度だったはずなのに、思い出として美化されているのかな・・・

 それとも、『優等生の彼女』の方が商品価値が高かったのか、どっちだろう。

 イサムの感覚では中学生が、更には優等生が、たった2週間でありとあらゆることを年上の彼女にしてた、なんて考えつかないのかも知れない。


「まあ、別に元彼もそんな酷い奴じゃなさそうなんだけどさ」

 イサムはその人を気に入ってたのか。

「ままごとみたいな付き合いだったら、そりゃきれいな思い出にもなるんじゃないかな・・・」

 僕は念のために駄目押しをする。イサムは素直に受け取ったようだ。

「ま、オトナの世界は俺らにはまだ早いってことなんだろうな~・・・あ~あ。ママゴトでいいから俺も彼女作ってみてぇ!」

 最後は大声になってしまい、イサムはクラスの女子全員からの批判的な視線を浴びる。

「いやぁねぇ、勇くん・・・これだから男子って」

「あんなこと言って。相変わらず子供っぽいんだから」

「なんで久保くん、あんなのマトモに相手してんのかしら。面倒見いいわね」

 わざと聞こえるように囁かれる厭味。イサムは頭を掻きながらため息をついた。


 わかってないなぁ・・・

 イサムは僕から見てもいい奴だし、僕なんかよりずっといい男だ。それがわからないようじゃ、まだまだきみたち子供だよ。

 僕はそう思いながら、凹んでいるイサムに笑顔を向けた。



 その日の夜。夕食を食べながら僕は母に問い掛ける。



「家庭教師の先生、まだ見つからなさそう?」

 母は弟が自分で食べるのを手伝ってやりながら、困ったような笑顔を僕に向けた。


「人に頼んで探してもらってるんだけど・・・なかなか条件が難しいみたいで」

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