#027 【恋愛】 [世界の終りに贈る歌]

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「・・・え?」

 僕の小さなつぶやきが聞こえたのか、ほの香先生は満足そうに微笑んだ。


「もうちょっとで着くわよ」



 こっちは山の方へ通じる道だ。

 単純にドライブなら、岬まで行って景色を眺めるというのも有り得るが、先生の口振りで目的地があるように思っていた。

 この先にあるのは、観光客向けの古びた食堂と土産物屋、それから人目を忍ぶように佇むホテル・・・


 まさかと思いながら、横目で先生の表情を盗み見る。

 先生の顔には、『オンナ』特有の色は見えない。

 そんなものなど見せないくらいに遊び慣れているというわけでもなさそうだし・・・

「ほら、見えて来た」

 先生がつぶやくように言って、僕は慌てて外を見た。

「あ・・・」

 鈍い銀色に輝く丸い屋根の建物・・・ここなら、小学校の頃に一度来た事がある。

「科学館よ。ここにはプラネタリウムと、大きな天体望遠鏡もあるの。司くん、望遠鏡で本物の星を見たことある?」

 僕は首を振って答える。

「プラネタリウムなら、小学校の見学旅行で見ましたけど・・・でも、星って夜にしか見えないんじゃないですか?」

 話している間に、車は科学館の駐車場に入る。

 スムーズに車をバックさせる先生の横顔は、いつもと同じ澄ました表情のままだ。


「星が夜にしか見えないのは、常識よ。まぁ、たまには昼間にでも見えるような明るい星もあるけど」

 荷物を手にしたほの香先生は、僕に降りるようにと目配せする。

「さぁて、折角のデートなんだから大いに楽しみましょ。今日は特別に夜まで外出許可を頂いているし」

 うきうきとした様子で歩き出す先生を、僕は慌てて追い掛ける。



 先生の言ういい所って本当にここなんだろうか?せめてもう少しデートっぽい場所かと思ってたのに。

 僕は銀色の建物を見上げて、こっそりとため息をついた。


 悔しいけど、この人の考えることだけは、相変わらず読めないままだ。

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