#045 【ライト】 [世界の終りに贈る歌]

最初から読む

 それがはったりではなさそうだと理解した時、血の気が引いて行くのを感じた。

「まさか・・・教授たちはそんなこと一言も・・・」


「当たり前でしょ。あなたがもし科学者だったら、マウスにいちいち説明する?」



 ほの香先生はため息をつきながら言った。

「この300mくらい後ろに、車が停まっているの、見える?」

 僕はそっと振り向く。公園近くの民家のそばに、白い乗用車がいた。

 ライトは消えているが、エンジンは掛かっている。はっきりは見えないが中に人がいるようだ。

「彼ら、カップルを装って、ずっとあたしたちをつけていたわ。レストランでは入り口の近くの席にいた。そして観測会にも」

「入り口付近にいたカップルなら覚えてる。男の人が、僕と同じメニューを頼んで・・・」

 そこまで思い出し、はたと気付いた。

「まさか・・・それって、僕が何を頼んだか記録するために?」


 先生は少し考えてから小さくうなずいた。

「実際はどうなのかわからないけど、そんな感じもするわね。彼ら、結局食べ切れなくて残してたし」

 そうだ。男の人は結局残してて、僕たちが車に乗り込んだ時に丁度店を出ようとしていた。

「そこまでして・・・」

「だから言ったでしょ。実験動物だ、って」

 先生は咳払いをして、お茶を一口飲んだ。


「それに・・・口止めされてたけど、あたしは一昨日直接会ってるの。研究所の助手を名乗る人と」

「それ、本物?なんのために?」

 僕が訊くと、少しためらいながら先生は続ける。

「司くんと・・・その、個人的に親しくなりそうな人への、任意の聞き取り調査ですって」

 先生は財布から名刺を取り出す。知らない名前だが、確かに名刺は本物だ。



「協力してくれたら、都度お礼をお渡ししますって言われたわ」

 何を訊かれるのか想像して、僕は蒼くなった。


 なんてことだ。それじゃぁ、ひょっとして、今までの『彼女』たちも・・・?

↓クリックお願いします。励みになります♪
人気ブログランキング にほんブログ村 恋愛ブログ にほんブログ村 恋愛小説
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:恋愛・結婚

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

#044 【連祷】#046 【武器】 ブログトップ



access countゴルフクラブ パター ショッピングブライス ナターシャムーア一騎当千 関羽雲長 ~DVD BOX版 チャイナドレスVer. (1/7スケールPVC塗装済み完成品)

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。