#046 【武器】 [世界の終りに贈る歌]

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「協力してくれたら、都度お礼をお渡ししますって言われたわ」

 何を訊かれるのか想像して、僕は蒼くなった。


 なんてことだ。それじゃぁ、ひょっとして、今までの『彼女』たちも・・・?



「家庭教師を始めてから、時々妙な視線を感じると思ってたけど、納得・・・」

「・・・もう、やめてください・・・」

 いたたまれなくなって、僕は先生の言葉を遮る。

 先生はため息をついて外を見つめた。


 沈黙が流れる。音楽はいつの間にか止まっていた。

「それで、これからどうするの?」

 先生が外を見つめたままつぶやく。

「もう、どうでもいいです」

 もう何もかもがどうでもいい。なんだかとても投げやりな気分になった。

 とんだ恥さらしだ。いっそこのまま、死んでしまった方がいいのかも知れない・・・

「・・・そう。それならあたしは必要ないわね」

 僕が顔を上げると、冷たい視線が突き刺さる。


「お勉強ができて人と違うなんて、ただおだてられてただけで、所詮軟弱なお子さまだった、ってことね」

「・・・なんとでも言ってください」

 僕は先生から目を逸らしてつぶやく。

 まっすぐな視線を受け止められるような気力は、もうどこにも残っていなかった。

「莫迦ね・・・この程度の裏切りで、人生終わったような顔をして」

「なっ・・・」

「誰でも、とは言えないけど、長年信じ続けていた相手に裏切られた、なんて話は腐るほどあるのよ」

 そんなことは知っている。

 でも、今こんな思いをしているのは、他の誰でもない、この僕だ。


「まぁ、今日いきなり受け止めるのは無理でしょうけど・・・冷静になってからもう一度考えてみても遅くないわ」

 慰めるように、先生が付け足す。



「そんな気力ないですよ」

 投げやりに言った僕の肩を、先生はぽんと叩いた。


「そんな状況になったことがない、の間違いでしょ。意外と人間はタフにできているものよ」

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