#047 【安堵】 [世界の終りに贈る歌]

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「そんな気力ないですよ」

 投げやりに言った僕の肩を、先生はぽんと叩いた。


「そんな状況になったことがない、の間違いでしょ。意外と人間はタフにできているものよ」



 ほの香先生はライトを点け、車を発進させる。

 タフでなきゃ生きられない状況なんて、僕は御免だ。きっと、他人事だからそんな風に言えるんだろうな。


「次は火曜日にね。それまでに、もう一度考えて自分なりの意見をまとめること。それが宿題よ」

「・・・もう必要ないんじゃなかったんですか?」

 先生は苦笑した。

「言い返す元気があるなら大丈夫よ。あら?あの車、どうやら離脱するのね・・・」

 サイドミラー越しに探すと、僕を『監視』していた車は、ひとつ後ろの信号で曲がるらしい。

 あの車、ナンバーを確認できる距離には決して近づかなかった。僕は舌打ちする。 

「もし研究所であいつに会うことがあったら、絶対殴ってやる」

 ふふ、っと隣から笑い声がこぼれた。



 別れ際に、先生はMDを僕に手渡した。

「これ、今日掛けてた曲。気分転換に聴くといいわよ」

 そう言って微笑むと、出迎えた母に会釈してさっさと帰ってしまった。


「どうだったの?楽しかった?」

 僕の上着を片付けながら母が問う。その瞳は興味津々という様子で輝いている。

 僕は手の中のMDをもてあそびながらうなずいた。

「うん、まぁ楽しかったよ。星もよく見えて。進がもうちょっと大きくなったら、みんなで行くのもいいんじゃ・・・何?」

 母が涙ぐんでいるのに気付いて、僕は驚いた。

「・・・僕、何か気に障ること・・・」

「違うのよ・・・ごめんね。お母さん嬉しいの。つ~ちゃんが・・・誰かと出掛けて楽しいなんて」



 目を赤くしたまま笑顔を作る母を見ていると、何故か罪悪感を感じる。

「別に・・・今までもそういうことあったじゃないか」


「そうよね。お母さん変よねぇ・・・」

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