#052 【顆粒】 [世界の終りに贈る歌 II]

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 僕が告白した当日、ほの香先生は僕を送り届けた時出迎えた母に向かってこう言った。

「あたしたち、お付き合いすることになりました。でもお勉強は手を抜きませんから、今後ともよろしくお願いします」


 にっこりと余裕の表情で微笑む先生に対して、母は・・・多分僕も、驚きで眼を丸くしていた。



 それ以来、母の先生に対する執着というか親密度が、一層増した気がする。

 ことあるごとに先生を自宅へ招き、口実を作ってはお喋りの機会をうかがい・・・

 ゆうべもうちに泊めて、かなり遅くまで2人で喋っていたらしいし。

 こうなると、僕との仲を邪魔しているんじゃないかと思うほどだ。



「ごめんねぇ、つ~ちゃん」

 カップを温めながら母が済まなさそうな顔をした。

「ん?何が?」

 冷蔵庫からプリンパイを取り出して切り分けていた僕は、手を止めて振り返る。

「つ~ちゃんの彼女なのに・・・お母さんばっかり独り占めしちゃって」

「あぁ・・・」

 僕は苦笑する。

「お母さんと先生が楽しいんなら、僕はそれでいいんだ」


 嘘ではない。

 でも、心の底からそう思っているわけでもない・・・それを言ってもしょうがないのだけど。

 今までの『彼女』たちが見たら、指をさして笑うかも知れないな。

 だって、先生と2人きりになったって、ちっともいい雰囲気になりゃしないんだからさ・・・

 皿を選びながら、僕はため息をついた。


 まったく、僕らしくない。

 自分から告白するのも作戦のひとつとして使ったことはあるが、その日のうちにイニシアティブを握っていた。

 付き合ってから最長でも1週間以内に、目的を・・・いや、えっと・・・関係を持っていた。

 しかしほの香先生との『関係』と来たら、せいぜい手を繋ぐ程度だ。



 これじゃまるで、お付き合いごっこじゃないか。

 ほの香先生に、相変わらず子供扱いされているのも結構癪に障る。


 早くチャンスを作らねば、どうにかなってしまいそうだ。

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