#020 【ピーマン】 [世界の終りに贈る歌]

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「司くんは、誰かとお話するのがあまり好きじゃないのかしら?」

 ほの香先生はそう言って、ケーキを一切れ口に運ぶ。僕はそれを横目で見ながら答える。


「相手と内容によりますけどね」



 どこの何が美味しいと聞いただの、誰がどこに行って何を見て来ただの・・・母は、僕にはどうでもいい内容を真剣に話していた。

「それに議論なら答えの有無に関わらず、議論そのものに意味があると思いますけど、さっきのような会話では・・・」


「・・・う~ん、それは『お話する』とはあまり言わないんじゃないのかなぁ・・・」

 先生は苦笑した。

 確かに、円滑なコミュニケーションのためには、つまらない話を聞いてやらなきゃいけない場面も出て来る。

 でも先生は自分の意見や感想を一言も喋ってはいなかったのだ。ただひたすら、母の言葉に相槌を打ち、同意する。

 その様子は、僕には『自分』がない、つまらない女にしか見えない。

 それが先生の言う『お話』だというのなら、人形でもテレビでも、充分話し相手になるんじゃないだろうか。


「あ、そうそう。勉強の進み具合も順調だし、明後日かその次くらいに外に出てみない?」

 半分ほどケーキを食べ終えた先生は、思い出したように話題を変えた。

「それって、デートってことですか?」

 からかうような口調で、僕は訊き返す。しかし先生はまったく気にせず、指を軽く頬に当てて考えるポーズを作った。

「そうねぇ、そうなるのかしら。お母様からはもう許可を頂いているんだけど、司くんが嫌でなければと思って・・・」

 いつの間に母とそんな話を・・・僕が密かに驚いていると、先生は首を傾げて僕を見上げた。

「・・・ねえ、どう?」



 あ、今のアングル・・・少しだけ上目遣いで、僕が結構好きな感じだ。

「そうですね。別に僕は構いませんよ」


 僕は咳払いをして、澄まして答える。やばいな、ちょっとどきっとしたかも。

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