#031 【ワーム】 [世界の終りに贈る歌]

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「司くん、どうかしたの?ひょっとして暗いから眠たくなっちゃった?」

 何故かほの香先生に対しては、隙を見せたくないという気持ちがどこかにある。


 今までの『先生』には、人によっては、わざと隙があるように見せたりもしていたのに。



 僕はため息をついてぼそりと言い返した。

「何故かハイパーホッケーを10試合もやるはめになって、予定外に疲れたちゃったんで」

「それは大変だったわねぇ」

 ほの香先生はふふっと小さく笑った。

 少しは申し訳ないとか思ってくれないのかなぁ。


 やがてプラネタリウムの開始を伝える館内放送が流れる。

「ここのは、機械がちょっと古いんだけどね、解説が見事なのよ」

 先生が耳元で囁く。

 そもそも僕は『新しい機械』を知らないので、比較のしようがないんだけど。

 まぁ、どれだけ見事な解説なのかは、取り合えず聞かせてもらってから判断しよう。


「え~、みなさん、こんにちわ~!」


 急に間近から声が聞こえて、僕は一瞬飛び上がりそうになった。

 僕以外にも、あちこちで小さな悲鳴らしき声が聞こえる。ほの香先生がくすくすと笑っているのが暗闇でも判った。

 僕は憮然とした声で先生に囁く。

「・・・ここ、座席にスピーカー付いてるんですね」

「どうも、驚かせてしまったようですみませ~ん」

 厭味な程爽やかな声で、解説員らしき男性が挨拶を続ける。

 どうやら初めて来た人は、まずこれで驚かされるというのが恒例らしい。



 プラネタリウムは、今夜実際に見える星空の解説から始まった。

「冬は空気が澄んでいるので、星がよく見えます。まず代表的なのは三つ星が印象的な・・・」



 カシャリと判りやすい音を立てて、星空にオリオン座を描く線が浮かび上がる。

 静かなBGMと穏かな声の解説。暑くも寒くもない絶妙な室温。


 それらのせいなのか、オリオンが蠍に刺される直前で僕の意識は途切れてしまった。

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