#032 【カール】 [世界の終りに贈る歌]

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 カシャリと判りやすい音を立てて、星空にオリオン座を描く線が浮かび上がる。

 静かなBGMと穏かな声の解説。暑くも寒くもない絶妙な室温。


 それらのせいなのか、オリオンが蠍に刺される直前で僕の意識は途切れてしまった。



「折角誘って頂いたのに、ごめんなさい」

 僕は科学館のベンチでほの香先生に頭を下げる。

 先生はふふっと笑って僕に言う。

「本当に疲れちゃったのね。別に気にしてないわ。可愛い寝顔も見れたことだし」

 みっともないのと恥ずかしさもあって、僕は不機嫌だった。

 起こすなら、もうちょっと早めに起こしてくれればいいものを・・・



 先生はプラネタの上映が終わる直前に、僕の耳元でこう囁いたのだ。

「つぅかさくぅん・・・朝ですよぉ」

 僕は寝ぼけたまま慌てて、椅子から転げ落ちそうになった。

「お・・・おはようござい・・・ます?」

 何かが変だと思いながらも、状況が把握できずつい口に出してしまったのを、解説員がしっかりと聞いていた。

「はい!おはようございます。明日の朝になりました!太陽が昇って来ています。そろそろ起きてくださいね~」

 近くにいた客が数人、くすくすと笑う。先生も他人事のように笑っている。

 まったく、なんてことだ・・・


「だからぁ~。プラネタで寝る人なんて、結構いるものなのよ。イビキかいちゃう人もいるくらいなんだし」

 笑いながら、一応慰めているつもりの先生に、僕は憮然とした表情のまま言い返す。

「でも、あんな起こし方ってないと思いますけど」

 普通に『プラネタが終わるよ』とでも言ってくれれば、余計な恥をかくこともなかったのに。

 先生は笑ったまま、僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。



「あ~もう、可愛いなぁ。司くんったら。あたし、こんな弟が欲しかったわぁ」

 僕はついムキになって先生の手を払った。


「いい加減、子供扱いはやめてくれませんか?僕はそんなにガキじゃない」

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