#038 【レトロ】 [世界の終りに贈る歌]
最初から読む
「・・・生きてるわよ。入院してるけど」
「え・・・?」
一瞬、囁くようなつぶやきが聞こえて、僕は訊き返す。
でもほの香先生はにっこり笑って、何も答えなかった。
「この人参、すごぉく甘くて美味しい!司くんも食べなよ。全然手を付けてないでしょ」
期待に満ちた目で先生は僕を見つめる。
こういうところは、なんだか腹が立つほど目敏い人だ。
「ひょっとして、僕が食べられないと思ってるんですか?特に好きじゃないだけですよ」
そう言って嫌々ながら、でも微塵も顔に出さないようにして、僕は一気に人参を食べ切って見せた。
観測会には親子連れや恋人同士が多いようだ。
みんな寒さで頬を赤くして、白い息を吐きながら説明を聞いている。
「プラネタリウムを観て頂いた方々はおわかりかと思いますが、今南の空に上っているのがオリオン座で・・・」
マイクを通していた時よりもっと声を張っている解説員の鼻も赤い。
科学館は市街地から少し離れた高台に建っていて、北側に海が広がっている。
今日のように月のないよく晴れた日には、星空がきれいに見える。観測日和といったところか。
北極星を見つけて、小さい子供が嬉しそうに報告している。
「無邪気だなぁ・・・」
僕がつぶやくと先生がふふっと笑った。
「司くんもそんなに変わらないじゃない?」
「僕は・・・いや、なんでもないです」
言いかけてやめた顔を、ほの香先生は覗き込む。
『子ども扱いするな、って?』とでも思っているのだろう。
別にふてくされたわけじゃなく、昔の僕は無邪気にはしゃいだりできなかったから・・・
それをほの香先生に説明するのが嫌だった。
「司くんは・・・」
僕の隣で黒い海を見つめていたほの香先生がつぶやいた。
「司くんも、子どもなのよ。ただ、他の人より色んな知識を持っているだけで」
↓クリックお願いします。励みになります♪
人気ブログランキング にほんブログ村 恋愛ブログ にほんブログ村 恋愛小説
「・・・生きてるわよ。入院してるけど」
「え・・・?」
一瞬、囁くようなつぶやきが聞こえて、僕は訊き返す。
でもほの香先生はにっこり笑って、何も答えなかった。
「この人参、すごぉく甘くて美味しい!司くんも食べなよ。全然手を付けてないでしょ」
期待に満ちた目で先生は僕を見つめる。
こういうところは、なんだか腹が立つほど目敏い人だ。
「ひょっとして、僕が食べられないと思ってるんですか?特に好きじゃないだけですよ」
そう言って嫌々ながら、でも微塵も顔に出さないようにして、僕は一気に人参を食べ切って見せた。
観測会には親子連れや恋人同士が多いようだ。
みんな寒さで頬を赤くして、白い息を吐きながら説明を聞いている。
「プラネタリウムを観て頂いた方々はおわかりかと思いますが、今南の空に上っているのがオリオン座で・・・」
マイクを通していた時よりもっと声を張っている解説員の鼻も赤い。
科学館は市街地から少し離れた高台に建っていて、北側に海が広がっている。
今日のように月のないよく晴れた日には、星空がきれいに見える。観測日和といったところか。
北極星を見つけて、小さい子供が嬉しそうに報告している。
「無邪気だなぁ・・・」
僕がつぶやくと先生がふふっと笑った。
「司くんもそんなに変わらないじゃない?」
「僕は・・・いや、なんでもないです」
言いかけてやめた顔を、ほの香先生は覗き込む。
『子ども扱いするな、って?』とでも思っているのだろう。
別にふてくされたわけじゃなく、昔の僕は無邪気にはしゃいだりできなかったから・・・
それをほの香先生に説明するのが嫌だった。
「司くんは・・・」
僕の隣で黒い海を見つめていたほの香先生がつぶやいた。
「司くんも、子どもなのよ。ただ、他の人より色んな知識を持っているだけで」
↓クリックお願いします。励みになります♪
人気ブログランキング にほんブログ村 恋愛ブログ にほんブログ村 恋愛小説
'; msg[1] = ''; // 設定終了 var ty = Math.floor(Math.random() * msg.length); // 表示開始 document.write(msg[ty]); // 表示終了 // -->
コメント 0